はいぎょ丸

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 ガイはドライヤーを使わない。それであの美髪なのだから恵まれた資質だ。しかし乾燥に時間をかければ風邪をひきやすいし、何より寝床につくのが遅くなる。一度宥め賺して乾かしてやったら、以降ドライヤー係にされてしまった。  今宵も風を当てながら黒髪に指を通す。水気が飛ぶごとに心も弾んだ。

 着物を新調したので写真を撮る。ぴらぴらと翻る裾も鑑賞するなら悪くはない。 「よく似合ってるね」 「どうせ七五三とか思っとるんだろう」  スタイルの良さを讃えていたのに、なぜか揶揄っていると受け取られていた。 「じゃあオレの千歳飴」 「そんな細いか」  褒められたみたいで照れた。

 故あってお揃いの着物を仕立てた。出来はいいし似合っているので、物自体に不満はない。ただし着用には問題があった。 「ちょっと足広げ過ぎ」  所作が大きく、裾がはだけてしまうのだ。注意をしても「細かいこと言うな」の一点張り。まるで取り合わない。これは少しお灸を据えた方がいいようだ。

 カップが割れた。テーブルの隅に置いていたせいで、少しの振動で落ちてしまった。 「気に入ってたんじゃないの?」  破片を拾いながら話す声が優しくて、胸の中が温まる。 「大事なものはそれだけじゃないさ」 「お前に執着するものなんてあったんだ」  本気で驚かれたので、名前は教えない。

 ゲームで勝負しようとガイが赤い箱のチョコレート菓子を持ってきた。 「両端を咥えるやつ?」  訊きながらマスクをずらせば、乗り気と思ったのか嬉しそうに頷く。その姿が可愛くて、ゲームをすっ飛ばしてキスしたら怒られた。どうせ結果は同じなのにと抗議したら、折った長さを比較する方だった。