宇月@(・8・)

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のぞえり部屋の置物になりたい人生でした。偶に文字も書いてます。 X避難所兼140字妄想こぼれ話置き場。 支部:https://www.pixiv.net/users/2621969 140字SS等:http://privatter.net/u/uzuki_77 DL:http://uzuki77.booth.pm マシュマロ:https://marshmallow-qa.com/uzuki_77

厚い雲に覆われた月を見上げ、隣の希へ呼び掛ける。 「残念ね」 「そうやね」 その声が言葉ほど落胆していないように聞こえるのは気のせいではないだろう。 最初に二人でこの『お月見』を試みた時も、確かこんな空模様で。 それから毎年一緒に過ごしているけれど、晴れた事の方が少なかったように思う。 なぜ『思う』と曖昧な表現になってしまうのかといえば、いつしかお月見の方がついでになってしまったからだ。 「じゃあ、始めましょうか」 軽く手を叩き、仕切り直しの声を上げると笑顔でワインの栓をあける彼女。 お月見団子代わりのチーズとお酒と尽きないおしゃべりと。 ここから先は、朝まで続く二人だけのパジャマパーティー。

希と初めて話した日の事はよく覚えている。 最初こそ緊張していたもののすぐに距離を詰めて来るから、身構えてしまった事も。 だって希も悪いのだ。 私の事をまだ何も知らないくせに、妙に『わかった感』を出すから。 しかも的外れじゃないだけに段々気を張る必要がなくなって。 結果、親友という立ち位置に収まっていた。 一方で、私が希の事をまだあまり知らない事にも気付いていた。 誕生日は過ぎてから知ったし、一人暮らしだと知ったのもずっと後。 でもいいのだ。 「この先全部知っていけば同じ事だもの」 そう呟きつつ、未だに掴めない所のある彼女の手を握り返す。 あの日、あなたが私を知ろうとしてくれた事が全ての始まり。

家を出る直前、絵里から薄い冊子を渡された。 表紙に『旅のしおり』とあるそれは、旅行の予定を立てる際に話題に上ったものだ。 「え?ほんまに作ったん?」 「だって必要でしょ?」 さらりとそう返すけど、行先の見所や効率的な回り方に加えて、『ソフトクリームが評判』とか『生湯葉に興味津々』などと書き込んであり、一目で手間のかかった物だと分かる。 「うち、こんなの初めて。ありがと、えりち」 行く前から楽しい気分になって、笑顔で連れ立った。 でも、最後の頁にあった星の綺麗なスポットの滞在時間の長さと、その後の予定が空白な事には触れずにおく。 だって、どんな過ごし方を考えているのか。知らない方が楽しみでしょ。

希は自分の破壊力をよく理解していないと思う。 お菓子の買いすぎや居間でのごろ寝を窘めても、上目遣いでの「だって好きなんやもん」で私を黙らせてしまうのだから。 その可愛い仕草と可愛い文句とに、お小言をいう気持ちなどすっかり失せて、「私のことは?」と聞いてしまうのもいつもの事。 それに続く「もちろん好きよ」からの甘い時間は、もはやお約束と化している。 お陰でめったに喧嘩もしないし、仲睦まじく日々を過ごせているのだけど。 何となく彼女の手の平の上でうまい事転がされている気がするから。たまに仲違いした時は散々煙に巻いてから、私からもこう告げるのだ。 「だって好きなんだもん。しょうがないでしょ?」って。

「一緒に住んだ方がお金が貯まるから」 そんな理由で就職を機に希の部屋に転がり込んだ。 本当は二人で住む部屋を探したかったけど、懐事情が厳しくて。 それでもこの先も一緒にいるために、引っ越しの初期費用は私が用意したかったのだ。 なのに希は私が目標金額への達成率を告げる度、元気がなくなっていくように見えた。 やっぱり窮屈な思いをさせているからか。 「これなら早めに引っ越せそう」 だからもう少しの辛抱よ、そう続ければ眉を下げる彼女。 「出てってしまうん?」 その一言で希の誤解に気づき、慌てて説明するとようやく笑顔が戻ったけど。 どうやらこの短い間に貯まったのはお金だけじゃなくて、愛情もだったらしい。

希は時々何を考えているのか分からない。 私の事を好きなはずなのにやけに素っ気なかったり、親しくなる前の距離感で接して来たりする。 それが人前だからというのは理解できるけど、その後も継続されると胸の辺りがざわついて。 どういうつもりかとじっと見つめていれば、こちらを見て苦笑する彼女。 「えりちは分かりやすいけど、分かりにくいなぁ」 そう言われて少しだけムッとする。 『その言葉、そっくりそのまま返したいわ』と、言おうとしたのに。 軽く触れ合う唇の温もりに思考が吹き飛び、それを感じることにただただ夢中になった。 結果、ただの照れ隠しだったと分かったけど。 繊細な恋人を振り回すのも程々にしてほしい。

秋は誘惑の多い季節だけに希との相談が欠かせない。 私が楽しみな新作チョコレートと、希の好きな期間限定のおいもや栗のお菓子と。 計画性をもって買わないと美容と健康が保たれないからだ。 「そこまで厳密に決めんでもええんやない?」 「でも、一通り食べたいでしょ」 カレンダーを眺めながら予定を決めていれば、それを覗き込み苦笑する彼女。 「ところで、なんで金曜日だけ品数が多いん?」 再度の問いかけにとびきりいい笑顔で返答する。 「週末はその分運動するから、羽目を外してもいいかなって」 少しの間の後、意味を理解した希が耳を赤くしているけれど。 変更の申し出はなかったから、秋の夜長のお楽しみはこれで決まり。

「希」 給湯室で名前を呼ばれ、慌てて声の主の口を塞ぐ。 「社内やろ」 そう注意すれば「そうだったわね」と悪びれない顔で謝る彼女は、端麗な容姿と優秀な成績とで社内中の目を惹き付ける我が社のエースだ。 その彼女、絢瀬さんと私が付き合っている事は絶対の秘密で、社内では苗字呼びを徹底しているのだけど。 こんな風に度々そのルールを破って来るからいつもひやひやしている。 今も誰も居ない事を確認しつつ、「どうしたの?」と聞けば耳元へ顔を寄せる彼女。 「待てなかったの」 又夜にね、『東條さん』そう続けて立ち去る彼女を見送りつつ煩い心臓を抑えた。 こんな事をされてしまったら、夜まで待てなくなりそうなのは私の方。

いつもの放課後、いつものように絵里が言う。 「希、好きよ。付き合ってくれる?」 「何遍言うてもそういう好きにはならへんよ」 冗談ではない事は知っている。でもそれを認めるのは怖いのだ。 なのに「でも、明日はわからないわ」と笑う彼女。 今は友達でもそのうち恋になるかもしれないでしょ? そう続ける絵里は怖くないのだろうか。友達に別れはないけど、恋人にはあるのに。 そんな事を考える時点でもう「友達」の域は越えている。 それすら認めたくない私の足元に忍び寄る『好き』が、逃げ場を削っていくのをただ眺める。 「でも、明日はわからないわ」 脳裏に蘇る絵里の言葉。 その明日はもうそこまで来ているのかもしれない。

絵里とはただの友達。 それは誰かに関係性を聞かれる度、何度も口にした言葉だ。 実際は「ただの」よりは親密だと思っているし、答える度不透明な痛みのようなものを感じている。 だからといってそれを教える義理もないからそう答えているだけだ。 でもその日たまたまそれを近くで聞いていた絵里は、何だか傷ついたような顔をして。 私の腕を引いて生徒会室に向かうなり、壁に背中を押し付けてきた。 「えりち?」 「ただの友達は、こんなこと、しないのよ」 ゆっくり言い聞かせるように告げられた言葉と、掴まれた肩に籠る力。 彼女の表情は逆光のせいで良く見えなかったけど。 それがどういう意味かは、重なる唇が全て伝えてくれた。

昼休みの希は人気者だ。 部活に生徒会と、放課後は忙しい事を皆知っているだけに、少しの空き時間を狙って彼女の前に列を成す。 そうして色々な事を占ってもらっては、彼女の周りに笑顔の輪が生まれるのもいつもの事。 「悪い事もええ方向に変えられるようアドバイスするのが肝心なんよ」 その秘訣について常々そう言っているのに。なぜか私の依頼は聞いてくれなくて。 「どうして占ってくれないの?」 「もう占ったやろ?…相性以外」 放課後の生徒会室で、肝心の希との相性だけ頑なに拒否する彼女へ直談判すれば、返る言葉に頬が緩んだ。 「そんなん占わんでも分かってるやろ」 そうね、でも私はそれをあなたの口から聞きたかったの。

希と暮らしだしてから、休養の取り方が上手になった。 前は休む事に罪悪感を感じていたのに、今はそれも大事だと実感している。 それもこれも、希が私を休ませる事に長けているからだ。 目の前で気持ち良さそうに立てる寝息を聞いていると自然に欠伸がこみあげてきて、気付けば一緒に眠っているし。 夢うつつに聞こえる少しテンポの遅い子守歌に、さらに深い眠りへ誘われる。 「希って寝息にまで催眠効果があるのね」 すっきりした心地で目を覚ましそう言えば、腕の中で得意気に笑う彼女をそのまま押し倒す。 「明日は平日やけど?」 「勿論休むわよ」 折角あなたが休み方を教えてくれたのだから、後は心ゆくまでこの時間を楽しむだけ。

『えりち、忘れ物しすぎ』 そんなメッセージと共に送付されてきた写真を見て苦笑する。 先日まで希の部屋に泊まっていた際に使っていた私物の殆どをこっそり残してきたのだけど、どうやら見つかってしまったらしい。 「折角すぐ分からないよう隠しておいたのに。よく見つけたわね」 そうひとりごちていると、すぐその正解が返ってきた。 『掃除しようとしたら出てきたんよ。どうする?』 今度持っていこうか、と持ち掛ける彼女に鈍いなあと思いつつ返答する。 『それは別宅用よ』 またすぐに戻るから。そう続ければ『どういう意味?』なんて聞いてくるけれど。 行くではなく、戻るといってるんだから。 もう言わなくても分かるでしょ?

雨は好きじゃない。髪は跳ねるし、足元が濡れるのも嫌だから。 でもその日、少しだけ雨が好きになった。 帰宅途中で降り出した雨に追われ、東條さんと二人で近くの公園に駆け込んだ。 「止まないわね」 「そうやね」 小さな東屋で空を見上げ、探るように言葉を交わす。 最初は雨音に負けそうなくらい少なかった会話も時間と共に増えていき、いつの間にか彼女の声を逃さないよう肩を寄せていた。 初めてのその距離感は落ち着かないけど楽しくて。 「うち、雨宿りって好きなんよ」 音楽みたいで、と続ける彼女に「私とは逆ね」と返しつつ、嫌いだったはずの雨に『もう少しだけ止まないでいて』と願った。

灯りの漏れる居間を覗くと、希が一人でグラスを傾けていた。 恐らく去年漬けた梅酒だろう。杯を満たす琥珀色はまだ淡く、その若さも含めて楽しんでいる様子が窺えた。 希が時折見せるその表情はどこか蠱惑的で。それが私でなく酒に向けられているのが少し癪に障る。 そっと近づき脇からグラスを取り上げれば、残念そうな声を漏らす彼女。 「熟す前になくなるわよ」 十年物にするんじゃなかったの?と続けると、決まり悪げに「寝酒にちょっと貰ったんよ」なんて言うから。 ならばとそのままグラスの中身を飲み干す。 「だったらぐっすり眠れるようにしてあげる」 お酒の力など借りずとも、要は休息を欲するほど体を動かせばいいだけの事。

私の彼女は天然の怪異ホイホイだなと常々思う 一人でお出掛けしただけで余計なものを引っ付けてくるし、それに全く気付いてないし。 「えりち~ちょっと」 今もコンビニから戻って来た彼女を手招きして、内緒話のように耳打ちする。 「ブラのホックの裏、蚊に食われたんよ。掻いてくれへん?」 そうして絵里が苦笑しながら背中に手を伸ばしてくるのに合わせて、自分も彼女の肩に憑いた『余計なもの』を祓い落とした。 「これでいい?」 「うん、すっきりしたわ」 本当は今何をしたのか、自衛のためにも伝えたほうがいいのかもしれないけど。 ついでとばかりに外された下着や、熱の籠った瞳を冷ましたくないから。 今はまだ黙っておく。

私が夏バテでへたりこんだ翌日、絵里が部屋に乗り込み宣言した。 「希の食生活改善を図るわ」 その厳しい表情に内心恐々としていると、まず手渡されたのはスムージー。 色味は緑でも、その優しい甘さに一気に飲み干した。 その後も出てくるのは野菜たっぷりなのにおいしい物ばかりで、毎日の食事が楽しみになった。 そんな食生活を続ける事二週間、自分でも分かるほど成果が表れていた。 夏バテは解消し、スタミナも付いて体調もいい。 「食事って大事なんやなぁ…ありがとう、えりち」 改めて礼を述べれば、にっこり笑う彼女。 「いいのよ、下拵えは大事だもの」 その言葉の意味を正しく理解したのは翌晩、彼女に美味しく頂かれた後。

夏休み最後の日曜はやけに騒々しかった。 練習時間の確認や宿題の進捗、休みの終わりを嘆く声など。 次々届くグループメッセージは、皆がすぐ傍で会話しているみたいで。 流れる画面を眺めて笑っていれば「どうしたの?」と伺う彼女。 「新学期もうちの居場所は変わらないなぁって」 夏休みが終わっても前と同じ日常が続く事を実感しつつ、その最たる『変わらないもの』へと笑みかける。 「そんなの当たり前でしょう?」 なんてさらりと返すその人こそ、もう自分の家に帰らないといけないはずだけど。 そう促すも「それは希の自覚次第ね」と言われ首を傾げると、続く言葉に胸が詰まった。 「だって、あなたの居場所は私の隣なんだから」

「認められないわぁ!」 ファンレターの仕分け中、絵里がぷりぷりと怒っている。 手紙というには厚みのあるそれは、たまに混ざり込む素人の自作小説みたいなもので、私と絵里を題材にしているのだ。 私も少し読んだけどありきたりな恋愛話で、自分達の名前が入っていなければ別にどうという事もない。 でも、そんな冷めた私の見方とは別に絵里は憤慨していて。 「他人の妄想より、えりちの態度の方があかんやろ」 元はと言えば絵里が人前で私を構うからだと苦笑すれば、なぜか手を打つ彼女。 「そうだわ!妄想の上をいけばいいのよ」 その後、逆に増えた接触に『妄想』は鳴りを潜めたけれど。 私が言いたかったのはそういう事じゃない。

絵里に食べた事がないというものを出す時は少しだけ緊張する。 「口に合わないかもしれへんけど」 一応そう言い置くものの、恐る恐る口を付けた彼女が味わうと共に目を輝かせる様が楽しくて。もんじゃや駄菓子など、手軽でチープなものをつい勧めてしまうのだ。 お陰で最近の絵里はすっかり庶民じみてきて。お泊りの夜より、翌朝ごはんとチーズを混ぜて食べる残り物のカレーが好物だと言う始末。 それが嬉しいと同時に、高貴なものを落としてしまったかのような罪悪感も覚えるのだけど。 当の本人が「私の口も心も、もうとっくに希仕様よ」と涼しい顔で述べるから。 私の心も体もすっかりあなた仕様よ、と思いつつ、笑顔で皿を差し出した。

「えりち、暑い」 ベッドの上で後ろから抱きしめた希が腕の中で身動ぎをする。 でも、私が腰を抱えているから逃げられるはずもなく。 その額から滴る汗がぽつぽつと私の腕に散った。 うなじに張り付いた後れ毛や熱さに火照った耳がどれだけ私をそそるのか、希はわかってないのだろう。 正面からなら伝わるかもと、抱えた身体を反転させ組み敷くと、言葉とは裏腹に欲を滲ませた瞳とかち合った。 体温的な暑さで文句を言っていたのだと思っていたけど、どうやら違ったらしい。 もどかしげなその表情に、口元が緩むのを感じながら耳元へと囁く。 「もっと熱くなれるでしょ?」 そうして胸の間から垂れた汗の行方をそのまま舌で追いかけた。

夏休み終盤に入り、残りの期間を希の部屋で過ごすことにした。 週単位でのお泊まりは初めてで、はしゃぎすぎて朝寝坊したり、家事のやり方を教えてくれる彼女の姿に新鮮な楽しさを感じていた。 そんな夏休みもあと僅か。 狭くて恥ずかしいからとお風呂は一緒に入ってくれなかったけど、風呂上がりの希の髪をドライヤーで乾かしていると、カレンダーを見ながら彼女がぽつりと「この生活ももう少しで終わりやねぇ」と言った。 二人暮らしの楽しさや楽さは並べるくせに、その奥にある寂しさは口にしないから。 少し計算高く耳元で囁く。 「卒業後、一緒に住めばこれが日常になるわよ」 それは私の中ではもう決まっている、遠くない未来の話。

「効きすぎて怖いわ」 「それは良かった」 カウンターで呟く金髪美人に笑顔で返す。 私が営む喫茶フクロウは深夜営業のハーブティー専門店だ。 不眠を訴えるお客に安らぎが訪れるよう調合したお茶が売りで、繁盛とはいかずともそこそこ続いている。 目の前でカップを傾ける彼女もその不眠症なお客の一人だ。 「依存症になりそう」 ぽつりと聞こえた声に慌てて「変なもんは入れてへんよ」と返せば、くすくす笑う姿に安堵すると同時に少し寂しくなった。 大抵のお客さんは不眠症が治ると自然に足が遠のくから。 そんな私の感傷をよそに、すっかり常連となった彼女が「眠いから泊まらせて?」と居着く様になるのは、それから数ヵ月後の事。

日頃から自分を律し「正しさ」を心掛ける絵里が、時々その清廉な衣を脱ぎ捨てる瞬間がある。 私の髪を撫でていたかと思えば急に肩に噛みついてきたり、穏やかなキスを交わす最中に、合図もなく息を奪うような塞ぎ方をしたりする。 そんな時の彼女の表情はほんの少し嗜虐的で。 それを自覚しているからか、離れた後は何度も謝りながら苦しそうな顔を見せる。 「私の中に怪物がいるの」 傷つけたくなんてないのに。 顔を歪めながらそう続ける彼女の頬を両手で包み、正面から目を合わせた。 「それもえりちやろ」 あなたが嫌うその怪物も、私にとっては愛しい存在だから。 飼い慣らすのではなく、そのまま丸ごと「正しく」受け入れるだけ。

登校日を待ちわびたのは初めてだった。 夏休み中でも会おうと思えば会えるけど毎日とはいかないし、あまり頻繁だと不自然に思われそうで。 だから当たり前のようにいつもの場所で希に会えた時、いかに自分が彼女との時間を欲していたのかを全身で理解したのだ。 それは、まるで干からびた大地が息を吹き返すようで。 登校後、花壇に水をあげるという希の後をついていき、その仕事を眺めていれば、活き活きとした緑に自分を重ねて口を開く。 「心地良さそうね」 「干からびるとこやったんよ」 そう返ってくる答えに思わず「わかるわ」と言いたくなったけど。私の渇きはまだ満たされてないから。 本心を零すのは明日の約束を取り付けた後。

視界の端に物言いたげな希の姿を捉えつつ、あえて気付かないふりをする。 彼女に告白してから一週間、「返事はちょっと待って」と言われて、大人しく待ってはいるものの、本当は少しだけ焦っている。 きっと断られることはないと思っているし、考える時間はいくらでもあげたいけど。 「…最近の希は可愛すぎるのよね」 恋に悩む彼女は誰が見ても物憂げで、その姿が以前にも増して可愛らしいから。 正直、余計な虫が寄ってこないか心配なのだ。 勿論、そんな輩は見つけ次第排除するけど、そもそも湧く以前に目にも触れさせたくない。 一体、いつになったら返事を言ってもらえるのか。 もう結末が予測済みの恋は、後は彼女の思い切り次第。