和田大貴|"PhoenixFlame"
@wada16.bsky.social
クラシック音楽のファンで、研究者。西洋音楽史や作曲家、作品について、哲学的な視点から分析し、その普遍性や深さを探求しています。クラシック音楽に興味のある方や、もっと知りたい方に向けて、わかりやすく楽しく書いています。目標は、クラシック音楽の普遍化を達成することです。早大哲学科卒。
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1988年12月7日、ガスタイクに刻まれた、二度と繰り返されぬ奇跡のアーベント。 - 伝説の一夜――スヴェトラーノフ、ミュンヘンの響きと邂逅す | TALES 物語・小説
1988年の冬、ミュンヘンは灰色の空の下に沈んでいた。ガスタイクのホールは、すでにチェリビダッケの息遣いで満たされていた。彼がこのオーケストラを指揮してから十年近く。楽員たちは、完璧を求めるあの男の視線に鍛えられ、音の一粒一粒を研ぎ澄ませてきた。透明で、精緻で、時に冷たいほどの美音。ブルックナーを繰り返し演奏するうちに、彼らは「ドイツの理想」そのものになっていた。そこに、異邦の巨匠が現れた。エフゲ...
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プロローグ 指揮台には国境がなかった - 岩城宏之──世界という壁の向こうで、音楽はまだ鳴っていた | TALES 物語・小説
その夜、ベルリンは寒かった。冷たい風が、石造りの建物の隙間を抜けていた。街灯の光は黄色く、道路には薄い霧が漂っている。遠くで自動車の音がする。誰も、日本から来た若い指揮者のことなど知らない。少なくとも、彼がこれから立とうとしている指揮台の上では。岩城宏之は、楽譜を閉じた。その瞬間だけ、妙に静かだった。指揮者という仕事は、不思議な仕事である。楽器を演奏するわけではない。歌うわけでもない。それなのに、...
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第二の故郷──東京の空は、記憶の続きを知っている - 第二の故郷──東京の空は、記憶の続きを知っている | TALES 物語・小説
朝の空は、思っていたよりも青かった。東京へ向かう朝。荷物はそれほど多くない。着替えと、少しばかりの身の回りのもの。そして、誰にも見せる必要のない記憶を、ひとつ。それだけで十分だった。旅立つ朝というものは、不思議だ。昨日まで暮らしていた場所が、ほんの少しだけ遠く感じられる。窓を開ける。風が入ってくる。その風は、まだ東京のものではない。けれど、これから東京へ向かうのだと思った瞬間、風の中に何かが混じっ...
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『魔笛の朝——サヴァリッシュとモーツァルトの静かな対話』 - 『魔笛の朝——サヴァリッシュとモーツァルトの静かな対話』 | TALES 物語・小説
1972年8月。ミュンヘンの市民ビール醸造所(ビュルガーブロイ)のホールは、朝の光をほとんど通さない厚い壁に囲まれていた。外は夏の終わりの陽射しがまだ強く、街は観光客のにぎわいに満ちていたが、ここだけは別世界だった。ヴォルフガング・サヴァリッシュは指揮台に立っていた。五十一歳。バイエルン国立歌劇場の音楽総監督に就任してまだ二年目。灰色がかった髪を丁寧に整え、黒い指揮服の襟元をわずかに緩めていた。譜...
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バーンスタイン晩年のマーラー演奏を比較検討する― 若き日のNYPO全集と、1980年代DG全集の対比を中心に - レニーとマーラー ― 情熱から深淵へ、解釈の軌跡 | TALES 物語・小説
レナード・バーンスタインは1980年代に入るとテンポを大幅に遅らせ、濃厚で大仰な表現を好むようになった。その変化が最も顕著に、そして最も議論を呼ぶ形で現れたのがマーラーの交響曲である。 彼は生涯に3つのマーラー交響曲全集を残した(厳密には第2は映像主体)。 1. 第1全集(CBS/Sony):1960〜1967年を中心にニューヨーク・フィル(第8番のみロンドン響)とのセッション録音。若き日の溌...
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クリスチャン・フェラスの生涯 - 天使の記憶 ― ヴァイオリニスト、クリスチャン・フェラス | TALES 物語・小説
1933年6月17日、フランス北部のル・トゥケ=パリ=プラージュで、一人の少年がこの世に生を受けた。クリスチャン・ジョルジュ・ピエール・レオン・フェラス。海辺のホテルを営む一家の三男だった。父ロベールはアマチュアのヴァイオリニストで、マルセル・シャイユに師事したこともある人物だった。戦時下の1940年、家族が南仏ニースに疎開していた頃、少年は病気で寝込んでいた。父は街を歩いていて、骨董屋の店先に小...
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