『伊藤典夫評論集成』 海外SFの受容、日本SFの歴史の現在進行のドキュメントを読んでいる気持ちに。なかでも(いち早くボルヘス、ピンチョンの名前を出しての)ニューウェーブの衝撃、ディレイニーやスターウォーズへの熱狂、そして星新一をはじめとした数々の追悼文が印象に残った。この本の成立までの経緯を含めた解説対談「伊藤典夫とはいったい何者なのか?」も興味深かく、また、後に翻訳された本の作品名の注がありがたい。 発売以来少しづつ読んで読了。1323頁、多分これまで読んだ一冊本では一番厚い本だと思う。
森田修史ts×魚返明未p @ NO TRUNKS サックスの隙間をブロックコードで埋めていくピアノの迫力ある、サックスの音を挑発するようにパラフレーズするスリリングな、しっとりと滴るような叙情を感じさせる、そんな様々な表情(ピアノとサックスの組み合わせの音色の良さ)を感じさせる演奏を堪能。 正月に森山威男との演奏でのピアノの激しいフリーフォームな演奏が印象でだったので、それから(ECM的な耽美さを感じさせる)ピアノ・ソロ、インティメイトなアドリブのやり取りがよかったベースとのデュオなど様々な演奏を聴いてきたが、今日のサックスとのデュオが一番よかったかもしれない。
『ディスクロージャー・デイ』 何が起こっているかわからないが、とりあえずこの危機的状況を脱っしなければならない、そんな冒頭の小切味いい展開。状況を知っているジョシュ・オコナーと何も知らず巻き込まれるエミリー・ブラントと対比的な逃走劇から、2人が出会ってのカーチェイス、踏切からの列車へ飛び乗るアクションに手に汗を握る。未知との遭遇的、ET的なモチーフが色濃くなってからの瞳の色/デバイスを使っての人の操作が事態を複雑に。さらに消防署からの逃走、放送局での攻防と、これまでのスピルバーグの(様々なジャンルの)映画の総浚いを見ているようなところも面白かった。
最近聴いているアルバム、 Meshell Ndegeocello/Synonym チャカ・カーン、ブランディ・カーライルなどとのデュエットで、ボブ・ディラン/神が味方、ヒューマンリーグ/「愛の残り火」と様々なジャンルを取り上げたカヴァー・アルバム。 各々の歌手の、曲の持ち味を引き出しつつ、自身のクールた佇まいを感じされるあたりはさすが。 曲では、ギルティが、歌手では、新作がインスタルメンタルのみだったので声の聞けたクリス・シーリーが印象に残る。 youtu.be/qm2F6wPUxFA?...
サマンサ・ハーヴィー『オービタル ある一日の16回の夜明け』 六人の宇宙飛行士の一日(この間地球を16回るという)の出来事が語られる。六人の 各々のプロフィール/背景も書き込まれ、宇宙船での(地上とは全く違く経験のしたことのない)日常生活の精緻で具体的な描写は説得力がある。 台風の移動に伴う知り合ったフィリピンの漁師への心配、(離れているだけに切実な)家族への想いなと、それぞれの心情が真に迫る。 母なる地球という言葉が出てくるが、宇宙から見た地球の描写は美しい。とともに人類による荒廃も仄見えて痛ましく、諸々複雑な思いを抱かせてくれる。
秋晴れの週末に、 クラスナホルカイ・ラースロー/北は山、南は湖、西は道、東は川、 細野晴臣/HOSONO RECORD HOUSE Vol.3、 奥泉光/木蓮記、 松浦寿輝/文学の黄昏、 蓮實重彦 山田宏一 山根貞男/映画を輝かせるためにⅠ そして、 大貫妙子/明日から、ドラマ/Wander Lust(1stアルバム未収録曲とヴァージョン違いのシングル)、 中古からKokomo、 マリア・クレウーザ/Eu Disse Adeusを入手、 John Roseboroの軽快で切ないアルバム“Va Va Voom”を聴きながら、 youtu.be/9gIfyfuJdRk?...
『ドン・デリーロ・コレクション』刊行記念 柴田元幸× 都甲幸治 @ 紀伊國屋書店 読めるはするけどわかったとは言いにくい作家としてV・ウルフ、H・ジェイム、D・デリーロがいて、理解しようと授業で取り上げたときに生徒だったのが都甲さんです、という導入から、スタイリッシュな文体で(パワーズに近いような)ギャグもふんだんにあると言いつつ、作品の捉えどころのなさと作家としてのあり方の特異さについての話が面白い。 好きな作品としては柴田/リブラ、都甲/ボディ・アーティストとのこと。
是枝裕和「ルックバック』 窓に面した机に向かう後ろ姿。ペンが紙を擦る音。着ているもの、雑煮、スイカ、外から聞こえる祭囃子などで時間を立たせていく。 窓から入ってくる光の変化にうっとりと。 膝まで積もった雪の中歩いていく二人を浮かび上がらせる夕暮れの電柱、風に靡くたんぼの穂、夕闇のなか走る電車、説明的なセリフはなく、情景のなかの人物の姿を通して感情を浮かび上がられる美しい風景にも。 物語が転調をしてからも、同じ時間の同じ景色を使って違う感情を描くあたりにこころ震える。 そして変わらなく机に向かって後ろ姿のラスト。 坂東祐太の控えめな音楽も。
最近聴いているアルバム、 ジョアン・ボスコ/Amigos Novos e Antigos 自身の80歳の誕生日を記念したデュエット集。カエターノ・ヴェローゾ、ヴァネッサ・モレーノ、シルヴァなどが参加、快活で活気に満ちた曲を中心にしっとりと聴かせる曲ありと(時に入る弦、ピアノ、で全曲のレコーディング風景が見れる)聴きところ満載。特にシコ・ブアキとのこの曲が。 youtu.be/DU_ee8QhSmk?...
ジョン・チーヴァー『橋の上の天使』 ジョン・オハラ、アーウィン・ショーと並ぶ雑誌「ニュー・ヨーカー」のサバービア/郊外を描く代表的な作家とは、常盤新平の本で得た知識。カクテルパーティ、夏の別荘など、道具立ては、1950年代の白人のサバービアでの生活とアッブダイクを連想するところもある。ただ、上記の3人と違うのは、不意の暴力や死に突然見舞われる短編が多いことで、全体的なテイストは凄惨なものに。表題作も心温まる展開からの結末は苦い。 本の整理をして、10以上未読のものの山を作り、少しづつそこから読んでいくことにした最初の本。
トニーニョ・オルタ @ 武蔵野市民文化会館小ホール 休憩前の最後の”Aquelas Coisas Toda”。変幻自在なギターと声が織りなすライブならではの躍動感に圧倒される。とともに後半の(ロー・ボルジェス、ミルトンの話の後で)”O Trem Azu”にミナスの独特な(リズムや美しい旋律)を感じすっかり魅了される。 さらに次の”Travessia”に不意打ちされたように、ただただ感動。 その他、ギターだけでの美しい“Moon River”、トム・ジョビンや(最新作からの)スタンダードのカヴァーも印象に残る。 ユーモラスなMC、手拍子.コーラスを求めるなどからうかがえる人柄のよさも。
クラスナホルカイ・ラースロー『サタンタンゴ』 章ごとに登場人物が変わる第一部では、何が起こっているのかが見当がつかないまま進んでいくが、長くうねるような文章の魅力や、酒場での大人数登場する時の視点の切り替えの見事さで読み進めていき、どうやら時間順の語りではないことだけはわかってくる。 第二部は、六章から一章へ進む構成で、ここで全体の構図が見えきて、(幕間劇的な爆笑ものの二章を挟んでの)最後で(第一部にも言及されていたが)語りの仕掛けが示されて、それこそ頭から読み直したい欲求に駆られる。久しぶりに手の込んだ作品を読んだという読後感。 とともに、タル・ベーラによる7時間を超える映画も見て見たくなる
『ナイトシフト』 表情をほとんど変えることのないホテルの夜勤のフロントと訪れる様々な(没落した貴族、ミュージシャン)客の姿を交互に映し出す、そんな単調な繰り返し基本としつつ、ときに旧式のエレベーターの移動で各階に待っている客の姿や客室での夜の過ごし様が(賭け事、「新学期 操行ゼロ」を思わせもする羽毛を撒き散らして遊ぶ三人の女性)映り、(ざらついた映像も効果的で)どこか夢のなかにいるような感覚になる。 そして、夜が明け、ドアを開くと聞こえる街のざわめきに、そうした一夜の夢が醒めていく感じになるのもいい。 ペンギン・カフェ・オーケストラ/サイモン・ジョフスの音楽も効果的。
最近聴いているアルバム、 aron!/Too Close For Running A・ギターが爪弾くシンプルなメロディーから、菅が、そして厚い弦が入る展開は、それこそティン・パン・アレーの頃のアメリカン・ポップスを思わせる。それに加えてチェットベイカーを思わせもするノンシャランな声が曲の魅力をさらに引き立てる。ドディー、メイ・シモネスが参加。 youtu.be/DsT69Kz4w4k?...
密やかな美 小村雪岱のすべて @ 埼玉県立近代美術館 装丁、挿絵(新聞小説の挿絵は、新聞原本の展示)、日本画、雑誌の表紙、団扇、関わった島津保次郎の映画の映像など(ライトでモダンな色使いといったテイストを保ったまま)多岐にわたるメディア登場していることがわかる見応えのある展示。 パノラマ的な舞台装置原画、都会、高層ビル、工場など(珍しい題材を扱った)「婦人の友」の表紙が面白かった。印象に残るのは、カラーで箱入りの贅沢な書籍の装丁。特に久保田万太郎は、作品の内容とも合い欲しくなる。 泉鏡花との関係の深さを改めて感じて、帰宅して種村季弘の鏡花論「水の迷宮」の装丁を見たりなど。
松浦寿輝『川の光2」 囚われの身となったゴールデン・レトリーバーを救う七匹の小動物スズメ、クマネズミ、クマタカ犬などの冒険。冒頭で救出チームを結成するが、そこから、初めてみる海、東京大横断、人間との触れ合いなど様々な経験をする、紆余曲折するあたりの物語の面白さ。そして、終盤に再集結して、各々の経験/個性を生かした救出劇こアクションの連鎖で息もつがせゆ生き生きとした描写の素晴らしさ。 そして、これまで共に過ごしてきた仲間が別々になり、別の物語に向かっていく(後日談的な)語りに、寂しさ、切なさを覚え、物語の終わりの余韻を際立たせている。
この週末は、 山東京伝、須永朝彦訳/復讐奇談安積沼/桜姫全然伝曙草紙、 マリア・レヴァ/絶滅種たちの国、 エリカ・クラウス/だれか、わたしを助けて、 そして、最近日課になりつつある中古のレコード棚から すばらしきサンバの仲間達、 セルジオ・メンデス&ブラジル’66/Stillness、 フィービ・スノウ/Second Childhoodを入手。 セルソ・ホンセカ、久しぶりの新曲”Kiss”を聴きながら、 youtu.be/NibrtEqsIgw?...
最近、聴いているアルバム、 Myles Sanko/I See the Light シルキーな声によるソウルを基調とした曲調に加えて、長尺なエレビの長尺なソロ、トランペットとピアノの絡みのスリリングさやリラックスしたギターのフレーズからホーンが重なるなどのジャズ的な演奏が魅力的。 youtu.be/Ll63uNoFJzU?...
前田弘二/Man 逮捕されかけた車の窃盗団の萩原護を更生させようといきなり現れる宇野祥平。その動機も曖昧な上、行動もストレンジでいささか居心地の悪い思いに。それが二人のカットを割らない長回しでの緊張感のある会話などを通して、萩原護(と見る者)に次第に受け入れられていく軽妙な展開は秀逸。次第にお互いの立場が変わっていくユーモラスで、こころあたたまる、さらにその先の意外性のある展開が楽しい。 少しづつ変わっていくひ萩原護の表情、物語の転換点となる唐田えりかが印象に残る。 「まともじゃないのは君も一緒」は恋愛もの、本作はバディーものだが、いずれも変わり者が絡んでいるあたりが共通しているのが面白い。
嶋護『ジャズの秘境』 ジャズミュージシャンの逸話とCDについて、 なかでも晩年のポール・デズモンドのカナダでの活動は、先日、たまたまモザイク・レコードのCDボックスセットを入手したので興味深かった。また、スコット・ラファロがいたビル・エバンス・トリオのアルバムの聴き比べも、確かに(久しぶりに聴いた)XRCD盤のベースのふくよかな感じにあらためて感心。実践的な記述がわかりやすく説得力があり、諸々の聴き比べたくなる。
エドワード・ヤン『恐怖分子』 一発の銃声から始まり、医師/作家の夫婦、銃撃現場にいた少女、写真家志望の青年、各々の人生/日々が並行して描かれる。それが一本の電話で、人生/生活が交錯し、波紋が広がり、一発の銃声と共に物語が閉じる、最小限の台詞でアクションの連鎖を中心とした語り口、風に靡く写真、荒廃した部屋の佇まい、高層ビルのガラス窓拭き、狭い路地とときに挿入される映像の美しさとともに、スタイリッシュな作品。
ローラン・ビネ『遠近法』 16世紀フィレンツェで起きた画家殺人事件の真相の追及をミケランジェロ、ヴァザーリらの書簡を通じて語られる。書簡を通じて、各々が受けと取った(主観的)状況の違いのが浮かび上がってくる。また、それが数あることで少しづつ客観的なものが見えてくる巧みさ。一人の人物が(人によって)全く違う意見の書簡を書くとにより、当時の状況、権謀術数がほの見えてくる面白さ。そんななかで明かされる真相は(タイトルの意味を重ねつつの)悲痛なものに。 かつて、同じ書簡小説である「ドラキュラ」、「月長石」を読んだ頃を思い出したりも。
森山威男 @ 新宿ピットイン ドラムスとピアニカでゆったりとメロディを奏で、そこに飛び込むようにベースがリズムを刻み始めると、森山の左手の一閃を合図に全員が入る。これから始まる演奏に期待する沸き立つような気分に いつものピアノがヴィブラフォンに変わって、ずいぶんとニュアンスが違うものに。速さを競う合うようなところから、ドラムとヴィブラフォン各々の音の隙間を埋めるよう、ときには激しく、ときにジェントルにと、バラードにおけるクールなテイストがとにかく聴かせる。「サンライズ」などお馴染みの曲の新しい魅力をひきだしていた 森山威男(Ds)川嶋哲郎(Ts)中山拓海(As)山本玲子(Vib)須川崇志(B)
『オークストリートの異変』 家族に隠れて小説を書いている妻となぜかビザの宅配に精を出す夫、二人のギクシャクした関係の描写から恐竜のいる世界へ。こうしたミステリ/は、誰が姿を消すな/殺されるかが物語のかなめになるが、この映画は、そこらあたりのつくりがうまく、冒頭の夫婦の関係を前提に、少しストレンジで、少しこころあたたまり、少しモヤモヤする結末が秀逸。 初めは、音と影だけで始まり、カメラをかなり引いて点景的に家族を捉えたり、クローズアップも片側に寄せて、その余白に、もしくは不意のパンで、いきなり恐竜が現れるシーンに何度もビクッと身体が反応をするような驚かされ方をした。
最近聴いているアルバム “Viva Donato” ドリ・カイミやマルコス・ヴァーリらの編曲のもとジルベルト・ジル、モニカ・サルマーゾ、ベベル・ジルベルト、ジョイス・モレーノ、ジャヴァン、ジャヴァンら錚々たる面々によるジョアン・ドナートのカヴァー集。 どの曲/ミュージシャンも魅力的だが、なかでも、パウラ・モレレンバウムとドラ・モレレンバウムの声が重なるキュートな”Cadê Jodel?”、イヴァン・リンスの切ない”E vamos lá”、アントニオ・アドルフォのピアノとあたたかな音色のホーンが聞ける“Simples Carinho”が印象的 youtu.be/HV1qkAprJeM?...
松浦寿輝 『月の光 』 前作「川の光」に登場した小動物たちを主人公にした七つの短編。 前作で「これはまた別の物語」語られなかったことについての短編、様々な形態の詩が読める詩の朗読会をテーマにした短編、さらには、SF、ファンタジーみのある短編と様々趣向を凝らしていてものが読めて楽しい。なかでも、孤独なフクロウ/ルチアと小惑星探査機はやぶさとの交感を描いた「孤独な炎」は感動的。 また、情景描写の美しさも前作と同様。
R・デミング『絞首台のある庭 私立探偵マニー・ムーン』 一人称で荒っぽい仕草/言動といったハードボイルド的な体裁をとりつつ、物語は、例えば最後に関係者を全員集めて謎解きをするといった本格物で、そのギャップが面白い。 また、真相が分かってからのひと捻りをきかせた展開の意外性も。 既訳の中編集に続いてのシリーズ共通のキャラクターの活躍も楽しい。 ーおれは煙草の吸い殻や灰から無限の推理を働かせるようなタイプじゃない。そういう能力は持ち合わせていない。足で稼ぐ昔ながらの探偵だ。どんな成果も基本的には足のおかげだ。(中略)まずおれの頭に浮かんだのはアーノルドのアリバイを確かめることだった。
この週末は、 ウンベルト・エーコ/プラハの墓地、 堀江敏幸/もののはずみ、 青木淳吾初期コレクション、 デヴィッド・バーン/自転車日記、 H・R・ウェイクフィード/幸運の木立、 そして、bar buenos aires essentials Vol.3を入手、 ロンドンのSSW Matilda Mannのポップな新作”Kismet”聴きながら、 youtu.be/Qy6oI0dvgB4?...
カサンドラ・ウィルソンが亡くなった。 “The WayYou Look Tonight”、”A Sleeping Be”、”The Weight”、”Wichita Lineman”など様々なジャンルの曲を自分のスタイルでカヴァーするところが好きだった。 2015年”Coming Forth by Day”の次の作品を待ち望んであただけに悲しい。 好きな”New Moon Daughter” 、”Traveling Miles”を聴いて偲ぶ夜。 youtu.be/DIQ6NT3hmhA?...
A Little Warm Death
YouTube video by Cassandra Wilson - Topic
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最近聴いているアルバム、 グレッチェン・パーラト/The Wise One 一曲目こギターから始まり、楽器が増えていき厚いコーラスが加わりと演奏が広がっていく様の心地よさ。アラン・ハンプトン、ミシェル・ンデゲオチェロ、ベッカ・スティーヴンス、マーリー・ジュリアナをフューチャーして、その個性が曲の幅を広げていき、よりカラフルなものになるとともにグラッチェンの歌のうまさを際立たせている。 youtu.be/Ri1-BR9Q32A?...