煮午。

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【二枚舌特権】 できてるゲタ水(全4p) ダイカイジュぬいに嫉妬する倅の話。 7月に出した本の世界線ですが読んでなくても無問題です。

ゲゲゲの鬼太郎改め、田中ゲタ吉は悩んでいた。
 呆れ半分、嫉妬半分、この感情の矛先をどうしたらいいのか悩みに悩んで、ここ最近はずっと眉は八の字だ。唇だって尖っていたかもしれない。
 
 ことの始まりは、今から◯十年前だろう。
 鬼太郎は山田某の手によって大きな海獣と化した。当時世間を騒がせたその大海獣事件が、なんと今の世になって風刺とエンタメたっぷりに映画化された。(もちろん無許可である)
 恐らくねずみ男が関与したのだろう。その映画はそれなりのヒットをし、若い世代にも事実を元にしたフィクションとして人気を博したようだった。
 それはいい。当事者であった鬼太郎にとって、映画の興行収入だ評判だなんだとそんなことはどうでもいい。
 作中の大海獣を模したグッズが多数発売され、茶色でむくむくとした獣なのか鯨なのかよくわからないディティールが「可愛い」と火がついて、グッズの売れ行きも好評らしい。それもどうでもいい。
 問題は、その発売されたグッズラインナップの中にあったぬいぐるみである。
 大きいぬいぐるみと、小さいぬいぐるみ。それぞれ茶色のふさふさした布でできており、たっぷりとした綿が詰まってふわふわと触り心地が良い。つぶらな瞳と大きな尻尾(尾鰭?)が愛らしいと評判で、知らぬ者が見れば可愛いのだろう。恐らく。多分。当事者としては全くそんな気持ちにはならないが。そのぬいぐるみを、あろうことか養父である水木が、いたく気に入ってしまったのである。
 
 
「……それやめませんか?」
「あ? 何がだ?」
 今もちゃぶ台の前で胡座をかいた養父の膝の上に茶色の綿の塊が座しており、煙草をふかす水木と共に新聞を眺めている。
「そいつですよ! そいつ! 膝の上の! それ!」
「それとは酷いな。これもお前(鬼太郎)だろ?」
「違いますよ! 僕は! こっち!」
 全力で自分を指し示すものの、養父は軽く笑って全然まともに取り合ってくれない。
「いやぁ、どうにも収まりが良くて、つい」
 養父は年甲斐もなく新生児くらいあろう大きなサイズの茶色の綿を撫でて目尻を下げている。これは僕の赤子時代を思い出している顔だ。
 さすがに外に連れ出すようなことはしていないが、それも時間の問題かもしれない。(ちなみに小さいサイズのぬいぐるみも、養父の文机の上にちょこんと置いてある)
 そして一番の問題は、養父はこいつを寝室にまで連れ込んでいるのだ。これが嫉妬せずにいられようか。
 確かに養父は、僕が大海獣になった当時、知らぬ間に全てが終わっていたことを酷く後悔していた。その反転衝動とでもいうのか、今になって与えられたこのぬいぐるみという存在に愛情を注ぐことで贖罪をしようとでもいうのだろうか。
「いやぁ、ちょうど良くてな」「何がですか」
「お前、夜いないこと多いだろ? 抱いて寝るのにちょうど良い」
「それはそうですが!」
 ご指摘通り、お化けである僕の活動時間はだいたい夜だ。
 人の道を外れたとはいえ、今でも労働に勤しんでいる水木は基本的に朝起きて夜寝る生活である。
 かくいう僕はいつ何者にどんな頼み事をされるかわからない上、基本的には夜に活動している。それは理解している。
 それでも今夜は違う。
「僕(本物)がいるでしょ!? 僕で良いじゃないですか!?」
「……お前はでっかくなっちまったからなぁ」
 喜び半分、無念半分みたいな憐れみを込めた視線が僕の頭の上からつま先まで注がれる。
「そいつも元々でかい奴ですが!?」
 微妙に話が噛み合っていないがそれは無視して、僕は膝の上の茶色い塊を指差す。奴の正式名称は〝大海獣〟である。
 このやり取りだけで理解した。これは真実ただこのぬいぐるみが可愛いだけだ。勝手に養父の感情を想像したのは間違いだった。ならば容赦しなくてよろしい。
 僕の烈火のようなヤキモチを、さも可愛いと言わんばかりに笑い飛ばす養父に憎々しい視線を送って、わざと大袈裟な仕草で茶色い綿を奪い取り、その膝を取り戻す。ここは僕の場所である。
 そこから駄々をこねるようにじゃれ合い、もつれ合い、新聞と煙草を奪い取って畳に倒れ込んだ。天井を見つめながらどこか楽しそうにけらけらと笑う養父の口を同じそれで塞ぐと、次第にそれは真摯に深くなっていく。やっとその気になってくれたのか、視線が合った。こちらの色めいた不埒な手と養父のそれを同じ温度に温めて、じゃれあった時に着崩れた寝衣のあわいから溢れる肌の色にため息を漏らす。
 短い水音とため息のような嬌声で、無理やり部屋の空気を変質させた。いつまでも子供をあやすような雰囲気はもうこりごりだ。
「ちょっと待て」
 いよいよその気になって乱れた寝衣に手をかけた瞬間、冗談みたいな中断を食らう。
「なんですか?」
 一体何を思い出したというのか、養父はいそいそと僕の下から抜け出すと、さっき僕が奪い取って畳の上に放り出していた茶色の塊に向かう。
 そいつは哀れにも横に転がされたままつぶらな瞳でこちらを眺めていた。
 養父はそいつをさっと抱き上げると、その視線が僕らに向かないようにくるりと背を向けて、襖の前に座らせた。そして、「これで良し」とでも言わんばかりにこちらに戻ってきて、あろうことか何事もなかったかのように再開を申し出たのである。
「……そういうのダブスタって言うんですよ」
「お、よく知っているな? 偉いぞ」
「もう!」
 そうやって虫のいいことばかり言う養父の口を、今度こそ塞いでやるのだ。

自家製チーズケーキを食すぞ!(監視付き🐝) 今回はギリシャヨーグルト使ったけど、軟さが強いから次作るとしたら水切りヨーグルトだなぁ

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このアカウントは27年2月発行の鬼水とお酒のアンソロジーの告知アカウントとなります。素敵な執筆者様にご協力お願いしております。 至らぬ主催ですが、どうぞよろしくお願いいたします。ちょっと帰りに寄っていきたいほっとするお気に入りのお店のようなアンソロジーになったら…と思います。 明日のスパーク、西1ケ44b/lightprayerにてご挨拶がわりのコースターをお配りします。お近くのお越しの際はどうぞお立ち寄りくださいませ。 (スサ)

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